市場拡大と規制強化が同時進行
2026年の日中貿易では、外貿易の数量・金額が拡大する一方、先端技術や軍民両用製品をめぐる規制が企業実務に直接影響する状況が強まっている。中国国家統計局によると、1〜7月の中国全体の輸出入総額は前年同期比17.3%増加した。輸出14.0%増に対し輸入は22.0%増えており、中国市場への海外製品流入も拡大している。
日本側では財務省が7月分の貿易統計確速値を8月28日に公表している。日中間では機械、電気・電子、化学品、金属、消費財、食品など幅広い品目が取引されるため、全体金額だけでなくHSコード別に動向を確認する必要がある。
1月6日に対日二用途品管理を強化
最大の制度変化は中国の輸出管理である。商務部は2026年1月6日、日本の軍事ユーザー、軍事用途、および日本の軍事能力向上に資するその他の最終需要者・用途へのすべての二用途品輸出を禁止した。対象は一般貨物全般ではないが、工作機械、精密機器、電子部品、センサー、特殊材料などでは仕様によって二用途品に該当する可能性がある。
さらに6月29日、中国は防衛研究所など20主体を輸出管制管控リストに追加した。別途、三井E&Sなど20主体を関注リストに指定し、輸出許可申請時により厳しい最終ユーザー・用途審査を求める措置も公表している。取引先名が規制リストにないかを定期的に確認する必要性が増した。
香港経由でも規制は消えない
中国本土から直接日本へ輸出せず、香港法人を買主として香港経由で日本へ販売する商流もある。しかし中国公告は、中国原産の規制対象二用途品について第三国・地域の組織や個人が違反して日本の対象先へ移転・提供する行為にも法的責任が及ぶとしている。このため、物流ルートを変えるだけで規制を回避できるとの判断は危険である。
契約には許可不成立時の処理を
日本企業が中国企業から規制対象となり得る製品を購入する場合、発注前に中国側へ規制判定を依頼し、必要に応じて最終用途証明書や最終需要者情報を提出する。売買契約には、輸出許可を誰が取得するか、許可が得られなかった場合の契約解除、前払金返還、納期延長、法令変更時の責任分担を定めておきたい。
IncotermsでFOB、CIF、DAPなどを設定しても、輸出管理上の法的責任が自動的に決まるわけではない。2026年の日中貿易では、価格交渉の前段階にコンプライアンス確認を置くことが、出荷停止や前金滞留を防ぐ実務上の基本となっている。