法人向け詐欺を警察庁が注意喚起
警察庁は2026年2月13日、法人の経営者などになりすまし、業務を装って指定口座へ送金させる、いわゆる「ニセ社長詐欺」について注意を呼び掛けた。ビジネスメール詐欺(BEC)の一種で、実在する社長名や会社名が使われるため、担当者が通常の社内指示と誤認しやすい。
中国・香港との貿易を行う会社は、海外銀行への送金が日常業務であることから特に注意したい。中国工場へのデポジット、香港商社への商品代金、物流会社への運賃、検査会社への費用など、海外口座へまとまった金額を送る合理的な理由が常に存在するからだ。
実際の取引メールに入り込むBEC
BECで危険なのは、不自然な日本語や英文で突然送金を要求するケースだけではない。取引先や自社社員のメールアカウントが侵害され、攻撃者が過去のメールを閲覧した上で、実際の支払予定日に合わせて口座変更を通知する手口がある。
例えば中国工場との量産取引で、担当者と数週間にわたり出荷日や残金についてやり取りしている途中、「外貨受取口座を変更したので今回から香港の新口座へ支払ってほしい」と本物のメール履歴に似せて連絡が来れば、経理担当者は疑いにくい。会社名やインボイス金額まで正確であれば、迷惑メール判定だけでは防げない。
警察庁はメール以外での確認を推奨
警察庁は、送金内容について取引先担当者へ電話やFAXなどメール以外の方法で確認することを勧めている。その際、疑わしいメール本文に記載された電話番号を使うのではなく、名刺や従来のアドレス帳に登録している連絡先を使うことが重要とされる。
特に、振込先変更、緊急送金、秘密扱い、通常と異なる第三国口座への送金は警戒すべきシグナルである。中国本土の取引先が香港口座へ変更すること自体には正常な商業上の理由があり得るが、だからこそ変更の真正性を確認する必要がある。
二重承認で「見抜けなくても止まる」仕組みを
企業は、新規銀行口座の登録・変更を一人で完了できない制度にすることが望ましい。一定額以上の海外送金について、営業担当と経理担当など二名以上で契約書、請求書、口座名義を照合する。経営者本人からのメール指示でも手続きを省略しないことがポイントになる。
万一誤送金した場合には、送金銀行へ直ちに連絡し、組戻しなどの可能性を確認するとともに、メール本文、ヘッダー、インボイス、送金記録を保存して警察へ相談する。海外銀行へ資金が移動した後は回収が極めて難しくなる場合がある。貿易会社の詐欺対策は、怪しいメールを人間が必ず見破ることを前提とせず、誤認しても資金が出ない内部統制をつくる段階に入っている。