改正仲裁法が3月1日に施行
中国の国際商事紛争を巡る制度が2026年に大きく動いた。2025年9月12日に全国人民代表大会常務委員会で改正された中華人民共和国仲裁法は、2026年3月1日に施行された。改正法は全96条で、従来法から条文を増やし、渉外仲裁制度や仲裁手続の整備を進めている。
中国企業との売買契約やOEM契約では、仲裁条項を採用する例が少なくない。新法施行を機に、過去に作成した契約書の仲裁条項が現在の取引構造に合っているかを再確認する意味は大きい。
5月には商事調解条例も発効
中国ではさらに、国務院令第827号による商事調解条例が2026年5月1日に施行された。同条例は、貿易、投資、金融、運輸、不動産、建設、知的財産などの商事紛争について、商事調解組織の下で当事者が自主的に話し合い、解決を目指す制度の枠組みを定めている。
仲裁と調解は同じ制度ではない。仲裁では仲裁廷が判断を下すのに対し、調解は当事者間の合意形成を中心とする。訴訟、仲裁、調解にはそれぞれ費用、時間、秘密性、執行可能性などの特徴があり、案件に応じた選択が必要となる。
「協議で解決する」だけでは足りない
日本企業と中国企業の契約で頻繁に見られるのが、「紛争が生じた場合は友好的に協議する」とだけ記載した条項である。協議で解決できれば問題はないが、決裂した後にどこの裁判所へ提訴するのか、仲裁を申し立てるのかが決まっていなければ、紛争の本題に入る前に管轄を巡る争いが起こる。
仲裁を選ぶなら、仲裁機関、仲裁地、仲裁規則、仲裁人の人数、使用言語、準拠法などを確認する。英語契約だから英語で仲裁できると自動的に決まるわけではない。
相手の資産所在地から逆算する
紛争解決条項を決める際には、「どこで裁判・仲裁をしたいか」だけでなく、相手企業の預金、不動産、設備、売掛金など主要資産がどこにあるのかを確認した方がよい。最終的に判決や仲裁判断を得ても、資産へ執行できなければ回収につながらないからだ。
日中取引では契約担当者が過去の雛形をそのままコピーするのではなく、取引額、相手企業の所在地、資産、契約言語、証拠の所在地を踏まえて紛争解決条項を設計する必要がある。2026年の制度変更は、既存契約を見直す一つの契機になる。