日中が同一FTAに入る実務的意義
地域的な包括的経済連携協定であるRCEPは、日本、中国、韓国、ASEAN諸国、オーストラリア、ニュージーランドなどを結ぶ広域FTAであり、日本と中国が同じ経済連携協定に参加する初めての枠組みとして重要な意味を持つ。2026年も関税削減スケジュールが進行しており、日中貿易では対象品目によって通常の最恵国税率より低い協定税率を利用できる。
ただし、RCEP参加国から輸入したという事実だけでは特恵税率は適用されない。商品のHSコードを確定し、当該品目が関税譲許対象であることを確認したうえで、RCEP原産地規則を満たし、所定の原産地証明または申告を行う必要がある。
原産地規則には複数の判定方法
原産品の判定には、完全生産品、関税分類変更基準、付加価値基準、特定工程基準などが用いられる。例えば日本から材料を中国工場へ送り、中国で加工して日本へ再輸入するOEM取引では、中国で行った加工が製品別原産地規則を満たすかによって中国原産品としてRCEP税率を使えるかが決まる。
RCEPには累積規則があり、締約国の原産材料を別の締約国で生産に使用した場合、一定条件で原産材料として扱える。日本、中国、ASEANに工程が分散する製造業にとっては、サプライチェーン設計次第で原産資格を取得しやすくなる可能性がある。
香港はRCEP締約地域ではない
香港は独立関税地域であるが、現時点でRCEP締約地域ではない。そのため、中国製品を香港へ移しただけで香港原産としてRCEP特恵を受けられるわけではない。一方、中国原産品や日本原産品が香港を単純に積み替えて目的国へ向かう場合には、積送条件を満たすことで元の原産資格を維持できる場合がある。
香港税関はFTA Transhipment Facilitation Schemeを運用しており、日本から香港経由で中国本土へ向かう貨物などについて、非加工証明の取得を支援している。香港で保管、積み替え、仕分けを行う企業は、どこまでの作業が原産資格に影響しないか事前に確認したい。
最も低い税率ではなく総コストを比較
企業はMFN税率、RCEP税率、他のFTA税率を比較するだけでなく、原産地証明取得費用、社内管理コスト、メーカーから必要資料を集める負担も計算する必要がある。年間輸入額が大きな商品では1〜2%の税率差が大きなコスト削減となる一方、少額・少量取引では証明管理コストが節税額を上回ることもある。
RCEP利用を継続する企業は、サプライヤー変更や部品調達先変更のたびに原産資格を再確認すべきである。前年にRCEPが使えた商品でも、製造工程や材料構成が変われば原産地判定が変わる可能性がある。